仙台初売りの移り変わり

仙台初売りがいつ頃から始まったのか、ご存じですか? 実はこれには非常に長い歴史と伝統があります。

1. 「仙台初売り」の歴史

藩政時代の文化文政(西暦1804年〜1824年)の頃に発行された『仙台年中行事』に、 「2日朝早くから店の格子戸をたたいて初売り初買い……」という記述があることから、 「仙台初売り」がこの時突然に始まったわけではなく、なにかしら「仙台初売り」の原型となるものがあって、 仙台藩一円に伝播する一方、年々藩の商圏拡大に伴い、藩外にも広く知られるようになったものと考えられます。

なぜ1月2日に初売りかというと、我が国では、2日は「初夢」・「書き初め」など、「年始事始め」の吉日とする考えがありました。 また仙台の風習として、年末に大掃除を済ませ、おせち料理を準備し、新年は家族揃って過ごし、 「元旦の掃除は福を掃きだし、買物はお金を吐き出し、1年の浪費につながる」と教え伝えられたことから、 商業者、消費者の多くは元旦に「事」を始めることに抵抗感があったのも一因と考えられます。

仙台初売りの移り変わり

公正取引委員会もこうした伝統に配慮し、旧仙台藩地域に限っては、正月3日間だけは景品の上限に関する特例を認めるなど、 長い年月をかけながら「仙台初売り」は全国的にも有名な商習慣となっていったのです。 今日、仙台商人は、2日の「仙台初売り」に今年1年の変わらぬご愛顧と謝恩の心意気をもって豪華な景品をつけて実施しており、 お茶箱や福袋、割増商品券などを求めて国内外から訪れる多くの買い物客で賑わっています。

「仙台初売り」実施日の経緯

  • 藩政時代(「初買い」「買初め」)
    ⇒年始事始めの正月2日
  • S50年~H6年(20年間)
    ⇒3日初売り定着(従業員の労務対策等)
  • H7年
    ⇒2日実施(消費者を含めて不評)
  • H8年
    ⇒3日実施(2日,3日の分裂開催)
  • H9年~H14年
    ⇒2日実施(全市的に足並み揃う)
  • H15年~
    ⇒2日実施(元旦の通常営業を容認)

2. ジャスコ岡田社長が来所し元日営業の意向を表明

仙台初売りの移り変わり

平成12年11月にジャスコの岡田元也社長が来所し、平成13年より元旦営業を行う旨を表明しました。 しかし、その後行われた仙台商工会議所村松会頭(当時)とのトップ会談を経て、 「仙台初売り」にイベント的要素を加えてよりブランドを高め、大々的に行う「検討の場」を設置することを条件に、ジャスコの元旦営業は見送られました。

3. 「仙台初売り」を考える会を設置

ジャスコの岡田社長の提案を受けて、平成13年4月に、学識経験者をはじめ消費生活者、大型店、商店街、商工団体等の代表者35名で構成する「仙台初売りを考える会」が設置されました。 (委員長:大村虔一東北大学大学院教授(当時))

会議は、報道機関に公開した形で開催され、生活者対象の街頭アンケート、消費者団体会員対象アンケート、関連業界へのヒアリング、商店会への意向調査等様々な角度から検証しながら、 平成13年7月に以下の検討結果を取りまとめました。

(1) 「仙台初売り」の実施日について

「仙台初売り」の実施日は、正月2日から全市一斉に行うものとする。

(2) 元旦の通常営業について

元旦の通常営業を強く要望する声があるが、好ましくないとする意見が大多数である。 その実施が連鎖的に広がる懸念があり、盛大な初売り実施のためにも、現時点ではその自粛に努めるものとする。

(3) 「仙台初売り」をより盛大に実施する方策について

「仙台初売り」を地域文化行事としてより広く発信できるものとするため、検討推進 組織を設け、その具体化に継続的に取り組むこととする。

4. 「仙台初売りをよりよくする検討会」を設置

「仙台初売りを考える会」の答申を受けて、 平成13年9月に、中川英毅一番町一番街商店街振興組合理事長を委員長とする「仙台初売りをよりよくする検討会」を設置し(構成メンバーは、商店街・大型店・商工団体・消費生活者・関連機関等、合計36名)、 さらに検討会の中に、実現可能な原案の具体策の検討を行うための専門部会(伊勢文雄サンモール一番町商店街振興組合理事長(当時)を部会長とする計18名)を設置しました。

仙台初売りの移り変わり

<主な具体策>
「仙台初売り」共同企画事業の実施

  1. 「仙台初売り」グッズの作製・頒布
    メインキャラクター“仙台四郎”をデザインした、縁起記念品(H14年~H15年は日本手拭い、 H16年以降はミニタオルハンカチセット)や、ステッカー・のぼり等を作製・頒布。
  2. 河北ウィークリー「仙台初売り特集号」の発行。(H15~)
  3. ホームページ「仙台初売りドット混む」の開設。(H15~)
  4. 「仙台初売り」スキップカードの作製。(H16~H20)

5. 「元旦通常営業を考える会」を設置

平成13年11月には、大型店6社(イオン、イトーヨーカドー、西友、ダイエー、ヤマザワ、ヨークベニマル)より、 平成14年元旦営業を見合わせるという報告と、改めて元旦通常営業の話し合いの場を設けて欲しい旨の要請を受け、 平成14年4月に「元旦通常営業を考える会」を設置し(委員長:宮原博通宮城大学事業構想学部教授(当時))、 以後6回の会議を経て平成14年7月に以下の答申をまとめました。

(1) 元旦通常営業については、大多数が好ましくないとする意見であり、自粛することが望ましい。 「仙台初売りは正月2日」は当地域の商業者・生活者・関係者が歴史的経過や伝統的な生活慣習等を考慮しつつ育んで来た、希少な地域伝統商業文化であり、 「元旦通常営業自粛」は年の初めとして日本の文化のありようを提案しているもので、重く受け止めるべきである。

(2) 元旦通常営業を実施する場合においては仙台の地域の風土や商業文化を踏まえつつ、それぞれの企業の社会的責任のもと、伝統の仙台初売りに対する影響を考慮し、 「初売り」と言う名称を使用しないことや、福袋や景品、割増商品券、先着プレゼント等のイベントやセール、バーゲン等を行わないことに努める。

(3) 仙台が全国に誇る歴史的な伝統商業文化である「仙台初売りは正月2日」一斉に盛大に実施する。 仙台初売りは、多様化する消費生活者の期待に応えるために、「仙台初売りをよりよくする検討会」等を通じ地域の商業者が相互に連携協調し、 情報を積極的に発信するとともに一層盛大に実施するものとする。

6. “「仙台初売り」正月2日一斉開催!”を引き続き要請

平成17年3月、仙台市の泉区、旧宮城町、旧秋保町をエリアとする『みやぎ仙台商工会』が、 「仙台初売りの実施日については各個店の判断に任せる」との方針を機関決定しましたが、 仙台商工会議所丸森会頭が、商工会をはじめ郊外の大型ショッピングセンターや家電量販店を個別に訪問し、 「仙台初売り」の伝統や、これまでの議論の経緯を説明すると共に、正月2日一斉に向けた各店の取り組みについて、改めて協力を求めました。

その結果、各社とも「元旦通常営業」、「2日仙台初売り」開催の要請を受け入れ、平成18年「仙台初売り」は、足並みを揃えて一斉に実施されることになりました。 “「仙台初売り」正月2日一斉開催!”につきましては、今後も、伝統行事としての「仙台初売り」を守っていくために、 引き続きお願いして参りたいと思います。